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チャリギョ!

「チャリンコ」行政書士の事件簿

経営者には遺言が必要。

2009.12.22 (Tue)


コチラからの続編です。

答えはズバリ「できません」となります。タイトルが物凄いヒントになっているので、ピンと来た方もいらっしゃるでしょう。

関連条文及び判例は以下の通りです。

民法898条(共同相続の効力)
 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

最判昭30・5・31 共同所有の性質
 相続財産の共有は、民法改正の前後を通じ、民法249条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではない。

民法249条(共有物の使用)
 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。


例えば、兄と弟がケーキを相続したとします(何じゃそりゃ)。この場合、持分が半分ずつだからといって、ケーキがスパッと半分に切り分けられる訳ではありません。ケーキ全体はもちろんですが、ケーキに乗っているイチゴやチョコレート片の一つひとつだって、それぞれ全てに兄弟が半分ずつの権利を有しているということになります。え~い喰っちゃえ!と言って弟がフォークでケーキを一口分切り分けちゃったとしても、その切り分けた一口分にだって、兄は持分に応じた権利を有するのです。これがいわゆる「共有」ですね。

で、困った弟が何をするかというと、「お兄ちゃんケーキ分けてくれよぅ」と訴えます。そう、これが遺産分割協議です。兄と弟の協議を経て初めて遺産が分割されることになりますが、「お前イチゴが多い分、こっちはケーキ多めな!」とか、「オレ生クリーム苦手だから、なるべくスポンジだけにして」とか、どのような形に分割しても、全員の合意があれば協議は調います。

何となく話が逸れちゃった感じなので、先日の例題の話に戻します。

Aさんが経営していた株式会社JKL。法定相続分に照らすと、B子は9/18だから60株。C男は3/18だから20株。よし、議決権の過半数で取締役が選任できるのだから大丈夫!…と考えてはイケマセン。この株式も、相続人全員が共有することになるのです。ですから、分割協議が調うまでは、新たな取締役を選任することはおろか、相続人が全員集合しない限り臨時総会すら開催できないということになります。1株ずつに相続人全員が権利を共有しているというと分かり易いかも知れませんね。

で、どうなるか。非常事態にも関わらず株主総会すら開催できないのですから、Aさんの会社は重要な意思決定機能が滞りますな。委任状でも何でも集めて何とか全員参加で開催できれば良いですけど、このケースの場合は、行方不明者や代襲者もいて、そうすんなりとはいかないようです。親族同士で経営権を争っているような場合、対外的にも大変な状況になることは容易に想像できます。

それは経営者にとって本意ではないでしょう。だから、経営者には遺言が必要なのです。そして、新たに施行された会社法によって可能となった種類株式を駆使して、より細やかな事業承継対策が可能となります。僕だって小さいながらも会社の経営者ですから、事業承継を見据えた遺言と定款変更を準備中です。人は、いつ死ぬか分かりません。僕はこの時に思い知ったし、遺言に適齢期なんてありませんから。

このブログをご覧になっている皆さま。少しでもハッとしたら、どうぞ当事務所までご相談くださいませ。


【おまけ】

ちなみに今回の例題。法定相続分は先に答えを出しちゃいましたが、B子が認知症の場合どうしたらいいの?とか、出生から死亡までの戸籍が必要なのは何名?とか、債務をC男が引き受けた場合の効果は?とか、協議後にAさんの遺言が出てきたらどうするの?とか、色々な切り口があります。興味のある方はチャレンジしてみてください。僕が尊敬する関先生の力作です。

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ひとこと

田原 亮

Author:田原 亮


ゆい生活法務事務所 公式ブログ
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